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Jul 30, 2005

カール・クレス

carl_kress

カール・クレスを紹介するとき、大抵「エディ・ラングとともにアーリー・ジャズ・ギターのパイオニアの一人で~」といった書き方をするわけだが、実際のところラングと並べるほどにはその名は知られていない。多分。
確かに草分けの一人であり、レッド・ニコルス、ミフ・モール、ドーシー・ブラザーズ、ポール・ホワイトマン、etcといった数々の有名楽団への参加という経歴も持つのだが、その後の影響力といった面から考えるとラングの足下にも及ばないのである。

クレスのレコードだが、ラングのように無尽蔵にはない。単独盤はキャピトル10インチ盤1枚きりのはずで、これは特にレアといったものではないが、でも滅多に見ない。価格相場は高くもなければ安くもないといった辺り。
で、このキャピトル盤が、正直言ってさほど面白いものではないのである。もちろん全編クレスの圧倒するようなテクニック満載である。が、しかし。こんな手アカの付いた表現は使いたくないが、感心はするが感動はしないの典型みたいな演奏で、まるで胸に響いてこないのである。特に"Jazz In G"なんてのは最悪で、単にテクニックだけをひけらかすようなプレイやアレンジにうんざりしてしまう。強いて言えば"The Goose Form Gander"の1曲が唯一救いか。

じゃあ、クレスは(私にとって)まるでダメなのかというとそうではない。クレスのレコードで一番好きなのがジャズ・アーカイヴ盤"The Guitar Genius In The Thirties"(LP)で、ここに収録されているディック・マクドノウ/カール・クレス・オーケストラがクレスの関わったものの中では聴き応え十分な録音群となっている。このオーケストラ・メンバーの一人、エイドリアン・ロリーニのバス・サックスがインパクト十分! それに相方のギター、ディック・マクドノウがまた素晴らしい! クレスはというと、ここでは出過ぎず引っ込み過ぎず、調和のとれたプレイに終止している。やはりクレスは延々と続くギター・ソロよりもサイドメンに徹しアンサンブルの一つとしてハマっているものがいい。そういった意味ではエドモンド・ホールのブルーノート盤"Memorable Sessions"もお薦めできる。これはチャーリー・クリスチャンがアンプを通さずにギターを弾いてたことで知られる盤だが、このLPのB面にクレスが入っている。
あともう1枚。ヤズーに"Fun On The Frets"という、クレスを中心としたギター・デュオやソロを集めたLPがある。クレスのギターをたっぷりというわけだが、それにしては珍しくこれは悪くない。いや、むしろデュオはかなりいい。というのもこれにはわけがあって、デュオの相方をトニー・モットーラ、ディック・マクドノウが務めているのである。しかし残念ながらこれも未CD。
というわけで、また次回。

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Jul 22, 2005

続・いづみや

「仙台の佐々木で~す。CD届いたよ。あんがとね!」。この前の日曜日の午後、パソコンに向かっていたところへ仙台の佐々木健一さん(東洋一のゴスペル好き酒屋のおやぢ)から電話が入った。実は数日前に「次号bsr(ブルース&ソウル・レコーズ)にこれこれの原稿を書くんだけど、○○の××というCD、持っていたら貸して」というFAXが来ていたのだけれど、ちょうど持っていたので送ったのだった。

次号はいつにも増してあれこれ記事を書くとのことで、例によってまたしばしブルースの面白話に花が咲いた。話の中身は原稿の内容にも関わることなので、興味ある方は来月発売のbsrを買って下さい。
さて、電話がかかってきたとき、ちょうど私もbsrの原稿を書いていたところだった。私が「頭をひねってるんだけどねぇ、なかなか…」と言うと、「な~に、あんなもん行数決まってるんだから。ちょいちょいっとさぁ」。アドバイスにも何にもならないんである(笑)。
そりゃ佐々木さんは書いても書いても汲めども尽きぬ泉がごときにネタが湧いて出るからいいけど、こっちはもう書くとなると七転八倒、CDだって書き終えた後はもう二度と聞きたくないくらいに聴くのだ。
だから、「マッシー(私のこと)さあ、あんまりこっちの職域侵さないでよ(笑)」って、佐々木さんは到底私の及ぶところじゃありませんてば。

原稿は日曜日に書き始めてやっと今日送れた。ま、実際に書いている時間はほんのわずかなんだけど。

patton_yazoo

※上の画像は本文とは何の関係もありません。

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Jul 17, 2005

アール・フッカー

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Earl Hooker - Don't Have To Worry (Bluesway BLS6032) [LP]

日本に限った現象かどうかは分からないが、ブルース・ギターはやはり人気なわけである。もうダントツ。とにかくギターのことになると、腕におぼえありの「うるさ型」がまあ出てくる出てくる。そして「あーでもない、こーでもない」と、語る語る。もう日本のブルース・ギター・ファン、総ステファン・グロスマン化。たまらん状況なのである。

というわけで(ってことでもないのだが)、いわゆる「ブルース・プレイヤーもの」みたいなのは苦手で、ほとんどそういった類のものは聴かない。ただ唯一、昔からアール・フッカーだけは別で、彼のちょっと珍しい音源なんかがCD化されたりすると結構マメに買ったりしているのである。
さて、先月発売のブルース&ソウル・レコーズ誌(No.64)に『モダン・シカゴ・ブルース基本の10枚』としてフッカーのブルースウェイ盤が選ばれていた。で、本盤をアーフーリーの"Two Bugs And A Roach"と並ぶ代表作と紹介した上で、「統一感ではこちらが上」と、かなりの持ち上げようなのだが、でも私にはこのアルバム、ロックにしか聴こえないんだなあ。まあ、それがモダン・シカゴ・ブルースってことかもしれないけど、個人的にはやはりどこを取ってもアーフーリー盤の方が上ではないかと。

ところでこのアルバム、まだCD化されてなかったのか。ちょっとうれしいかな。

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Jul 14, 2005

Jazz Off The Air

esoteric

ミントンズ・プレイハウスに携帯録音機を持ち込んだコロンビア大学の学生、ジェリー・ニューマンが興したのがエソテリック・レーベルである。彼が記録した多くのジャム・セッションはどれも貴重かつ第一級の演奏であり、中でもレーベルを代表するアルバム、『ミントン・ハウスのチャーリー・クリスチャン』はニューマンの名と共にジャズ史に刻まれているのである。

そのエソテリックに"Jazz Off The Air Vol.1/Vol.2"というタイトルの2枚のエア・チェック盤がある。内容は47年ジャズ放送会社WNEWからのもので、Vol.1がロイ・エルドリッジ、フリップ・フィリップら、Vol.2はファッツ・ナバロ、ビル・ハリスらによるライヴ録音となっている。
実はこのVol.1を買うのが私、二度目なのだが、別に間違ってダブリ買いしたわけではない。最初に買った盤は、B面があっという間に終わってしまうほど針飛びするひどい代物で、それでちゃんと聴けるやつがもう1枚欲しかったというわけなのだ。
この2枚の10インチ盤は未だCD化されていないと思うのだが(もし間違っていたらご教示を)、1曲だけならCDで聴ける。平成のジャイヴ小僧こと、ドクター魚住監修によるPヴァインの「ジャイヴでスウィング」の1枚、"The Best Of Jive Vocal Groups 2"に収録されている「ハニーサックル・ローズ」がそれ。
ところで、魚住さんはそのCDライナーに同曲について「正体不明」と書いている。先にも書いたようにこの音源は出所もメンバーもすべて明らかなのだが、ま、魚さんのことだから、おそらく「不明」としておいた方がミステリアスでリスナーの興味が沸くだろうと考えてのことであろうと思う。
私がこのCDを聴いたとき「このハニーサックル・ローズはあれだ!」とすぐにピンと来たのは、針飛びのお陰でしつこいくらいに聴いていた「A面」に収められていたからなのであった。

さて、今回やっとB面に収録されていたアル・ケイシーの"Buck Still Jumpin"をちゃんと聴くことができた。全編にさえ渡るジャンピン&ジャイヴィなギター! グレート! これでまた胸のつかえが一つ取れた。

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Jul 09, 2005

アーティ・ショウ

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Artie Shaw - Any Old Time (RCA Victor LPM-1570) [LP]

アーティ・ショウが好きだなんて言うと、ジャズ・ファンからは軟弱者扱いされるかもしれないけれど、私、彼のクラが結構好きなのである。しかし今、「ジャズ・ファンから~」と書いたが、考えてみると現在ショウがジャズ・ファンから好きとか嫌いとかの範疇にあるのかどうか。結構微妙なセンか。モダン・ジャズ以降のものしか聴かない人にとっては「ショウって、誰?」っていうのもありそうだし。

ショウは、ベニー・グッドマンがキング・オブ・スウィングとして君臨していた30年代半ばから後半、同じクラ奏者として唯一、人気実力共に肉薄するジャズメンだった。特にスローでセンチメンタルな曲を吹かせると、ある意味グッドマンを超えているのではないかと思わせるくらいに素晴らしく、とりわけ歌伴でのクラの歌いっぷりたるや、たまらんものがあるのである。彼はハリウッド女優も取り混ぜ計8回結婚しているが、まあ、こんなふうに横で吹かれればそれもむべなるかな、というわけである。

今回のLPはアーティ・ショウ・オーケストラのフロント・ヴォーカルを務めたビリー・ホリデイ、ホット・リップス・ペイジ、ヘレン・フォレスト、リナ・ホーンらの歌ものがコンパクトにまとめて聴けるのだが、中でもひときわ光るのがヘレン。ビリーがいいというのも分からないでもないが、ここは断然お父さんのアイドル、ヘレン・フォレストを強く推したい。甘くそしてハツラツとしていて、軽くスウィングするヘレンのヴォーカルは癒し効果抜群。しかも美人! 子供にソッポを向かれ、カミさんの怒号におびえと、くたびれた果てたお父さんのハートをわしづかみである。
また、インストもスタンダードが多く、ショウの歌うクラが堪能できるという塩梅。参加ミュージシャンはジョージ・ウェットリング、ヘンリー・アレン、ロイ・エルドリッジ、バーニー・ケッセル、ジミー・シャリーなど、マニアも納得の布陣。ジャケット良し。いいこと尽くめの1枚。「スターダスト」だけがショウではないのである。

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Jul 04, 2005

Alone with God

saga_blind_willie_johnsonブラインド・ウィリー・ジョンスンはブルースマンではない。が、我々ブルース・ファンを引きつけてやまないのは、歌詞の内容はともかく、彼の歌に頂点に立つブルースマンが放つのと同質のブルースを感じるからであろう。圧倒的陰鬱感が持つ強さ、これである。

彼のレコードで最も愛聴したのはYazooのLPだが、今は専らCDである。大体が寝ころんだ状態で聴くので、ひっくり返さなくても済むCDが都合がいいというわけだ。「彼の神聖な歌をゴロ寝の状態で聴くのか」というご批判は甘んじて受けるとして、彼のCDだが、CBSから出ているコンプリート2枚組が決定盤であり、取りあえずこのセットを持っていればあれこれ悩まされずに心安らかに過ごせるわけである。
しかし2枚組というのは結局のところ入れ替えが必要で、ゴロ寝聴きにはやはりどうも好ましくない。大体そんなに大量に聴く必要もないし。
そこで昨年フランスsagaからリリースされた本盤。何と言ってもこのジャケットである。手元に置いておくだけで幸せが宿ろうかというくらいのもので、ジャケットなんか無視したようなCBS盤とは大違いである。
しかもジャケットがいいと、出てくる音まで1ランク上がって聴こえてくるから不思議だ。すべてのCDがこうあってくれたらなあ。切に願う。

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Jul 01, 2005

Circe Link

Circe Link - One Drop Of Poison (Self-released)

circe_linkとうとう来日公演を果たすまでにブレイクしたサーシ・リンクだが、その彼女をディストリヴュートしているCAFE GOATEEの松本さんから、5月末頃だったか彼女の来日公演と同時にニューアルバムが出るという内容のメールをいただいた。で、先日やっと入荷案内の知らせを受けて早速送っていただいた次第。

彼女との出会いは、たまたまのぞいたCAFE GOATEEのホームページだった。そこで見た彼女のファースト・アルバムに興味を引かれて買ったところいたく気に入ってしまい、自分のホームページにもレヴューも書いたのだが、あれが2003年の12月。その後セカンド・アルバムが出たときもすぐに買ったが、そんなこんなであれよあれよという間に人気が拡大、今の状況に至るというわけだ。

彼女の魅力は尊いまでの普通さにある。それはもしかすると計算された普通さなのかもしれないけれど、アーティストである以上、何かしらの個性を売りにするのと同様、普通さを売りにするのだって有効であるはずだ。
松本さんも最初に彼女をCD BABYで見つけてすぐに気に入りコンタクトをとられたらしいが、彼女のそういった飾り気のない普通さが誰の心の中にもすぐにとけ込んでいくのだろう。
それにしても魅力的な歌声だ。透き通るような爽快感、しかもほんのちょっとの妖しさも同居している。何よりも変にこねくり回さない自然な歌い口が実に好ましい。

収録曲のすべてが彼女の手によるものだが、う~ん、ソング・ライティングについては一作ごとに腕を上げている。今回はこれまで以上にジャズ、ブルース、カントリーを消化したサウンドで曲作りにも幅が出てきたが、相変わらずクールでいてどこかノスタルジーを感じさせるところが実にいいなぁ。

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