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Oct 30, 2005

試聴ノート/10月

Roland Kirk Quartet - Copenhagen Concert (Lone hill Jazz LHJ10200)

roland_kirkサニー・ボーイ・ウィリアムスン(2世)のコンプリートを目指す上で一番のネックがローランド・カークのコペンハーゲンでのライヴ音源ではなかろうか。サニーボーイはこのライヴに2曲参加しているのだが、しかしこれがカークの10枚組CDボックス・セットでしか聴けないのである。2曲のために赤の他人の10枚組。しかもジャンルがまるで畑違い。もっとも、コアなファンにしてみればサニー・ボーイのファン度を誇示できる絶好のアイテムというわけである。
今は亡き友人、ネットワーク佐藤氏にかつて「サニー・ボーイは全部聴きたいですからねぇ~。思い切って買っちゃいましたよ。うわっはっはっは!」と豪快に笑われたときのあの悔しさ、もどかしさ。ハタから見れば威張る方も威張る方だが、悔しがる方も悔しがる方という、ただのバカ者同士であるわけだが。
で、その買えなかった10枚組セットだが、何と最近コペンハーゲンのライヴ音源のみを2枚組で、もちろんサニー・ボーイの2曲を収録してリリースされたのである。これを朗報と言わずして何と言うか。カーク・ファンにしたって朗報ではないのだろうか。よく分からないけど。ま、カークの1枚目として本盤を買うのはどうかとは思うが。やはり『リップ・リグ&パニック』とかアトランティック盤とかになるんでしょうかね、ドクターさん。
そういえば、今月はサトちゃんの命日にあたる月だった。もう3年か。これでまた少しは追いつけたかな、サトちゃん。

V.A. - Good For What Ails You: Music of the Medicine Shows 1926-1937 (Old Hat CD-1005)

good_for_what_alls_you超スローペースながら出すアルバムすべてがハイ・グレードというオールド・ハットからようやくレーベル5枚目となるアルバムがリリースされた。今回は「メディシン・ショー」をキーワードに組むという、今までにはなかったちょっと変わった趣向によるコンピで、レーベル初の2枚組となっている。
今回のコンピに限らないが、オールド・ハットのいいところは白人黒人問わずに収録しているところにある。ジム・ジャクスン、ヘンリー・トーマス、フランク・ストークスに混じってフランク・ハッチスン、サム・マッギー、エメット・ミラーといった必聴級の白人アーティストが並ぶ。
とかくブルース・ファンは黒人偏重の傾向に陥りがちだが、音楽を縦割りのみで聴くのではなく横割りで聴いてみることで、ブルース、ヒルビリーといったジャンルを越えた戦前ミュージック・シーンのまた違った面白さが見えてくると思う。理屈はともかくご一聴のほど。
前回もだったが、今回もまた72ページに及ぶボリュームたっぷりのカラー・ブックレットが付いている。で、これがまた見応え十分で、これだけでも買う価値があるというもの。
それにしてもショーティ・ゴッドウィン、エエなあ。

※「Yazoo追記」できました。手抜き記事ですが、興味のある方はこちらを。

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Oct 20, 2005

バンジョー夜話~その三

guesnon

ローレンス・マレロといえば「世界は日の出を待っている」である。192小節、6コーラスに及ぶバンジョー・ソロは、ジャズ・バンジョー不朽の名演として知られるばかりでなく、本曲を収録したジョージ・ルイスの"Jass At Ohio Union"はこの1曲によりコレクターズ・アイテムとして存在しているわけである。
しかし、名演ではあるがあれを圧巻と言って褒めそやせるほど私はまだ人間ができていない。ハリー・リーサーやエディ・ピーボディを心棒する身としては、ここでのマレロのソロは単にコードをジャカジャカ演ってるだけで大して芸のあるソロとも思えない。6コーラスも弾かずとも2コーラスもあれば十分という内容である。
マレロのこのソロが名演とされるゆえんは、演奏テクニックよりもライヴ・パフォーマンスとしてバンジョーを延々とかき鳴らし続けたその姿がエキサイティングなものであったというところであろう。

ところでローレンス・マレロの兄のジョン・マレロもまたバンジョー・プレイヤーであった。で、その兄のジョンにバンジョーの手ほどきを受けたのがニューオーリンズ生まれのクリオール・バンジョー・プレイヤー、ジョージ・ゲスノンである。
ゲスノンはキッド・トーマスやジョージ・ルイスらとの録音もあるが、彼ならではの魅力にバンジョーの弾き語りがある。歌もバンジョーも能弁を振るうタイプではない。とつとつと語るといった感じのものではあるが、これが実に滋味深い。戦前のカントリー・ブルースマンに相通じる味わいと言っていい。
画像右のLPは59年に白人のジャズマニアに再発見されての録音集で、全曲バンジョーまたはギターによる弾き語りとなっている。ゲスノンの魅力が堪能できる貴重な1枚である。滅多に見ないレコードではあるが、本盤の内容にさらに大幅に曲数をプラスしたCDがアメリカン・ミュージックより出ているので興味のある方はそちらを。

さて、上記のLPは「再発見後の」というくらいのもので、ゲスノンにはそれ以前(戦前)にも録音がある。こちらはジミー・シャーリー(g)、アート・ホーディス(p)、ポップス・フォスター(b)といった腕利きのジャズメンがバックに付き、あか抜けた雰囲気のジャズ・ブルースといった趣。どれもブルース・ファンに十分アピールする内容だが、中でもベッシー・スミスの“Nobody Knows You When You're Down And Out”と似た曲調を持つ“Goodbye, Good Luck To You”に漂うわびしげな感じ。しみじみするなあ。
ちなみに同曲は36年にリトル・ブラザー・モンゴメリーとの録音もある。さらには前述のLPでも演っているのだが、恐らく彼のお気に入りであったのだろう。これら戦前録音はすべてドキュメントのCDで聴くことができる。
しかしゲスノンである。名は体を表すか。いや、最後に余計なことを言った。

*画像左より
George Lewis - Jass At Ohio Union (Disc Jockey DJL-100)
George Guesnon - The Creole Blues (Jazzology JCE-11)
V.A. - Jazzin' The Blues Vol.2 (Document DOCD-5468)

*文中で触れたリトル・ブラザー・モンゴメリーとの録音は以下のCDで。
Little Brother Montgomery - 1930-1954 (Document BDCD-6034)

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Oct 15, 2005

近着CDから

最近聴いたCDを手抜き紹介。

Paramount Hot Dance Obscurities Vol.2 (Jazz Oracle BDW8049)

j_oracleカナダのジャズ・オラクルからの新譜。いわゆる白人ダンス・バンドのコンピだが、タイトルどおりのマニア向け。「ひょっとしたら隠れた宝石が!」などという期待は一切ご無用。強いて言えば、チェッカー・ボックス・ボーイズというバンドがまずまずの収穫か。かなり苦しいけど。
しかし第2集というのが考えさせられるな。第1集、好評につきなんてことはよもやあるまいに。ジャズ・オラクルには「採算」などという言葉はないのである。
ちなみに"Edison Hot Dance Obscurities Vol.2" (BDW8048)というこれまた第2集ものが同時リリースされている。タイトルからこちらもコンピかと思ってしまうが、Oreste and His Queensland Orchestra(やはり白人ダンス・バンド)の単独アルバムとなっている。内容からすると、こちらの方が若干いい。微妙だが。
いずれにしても、普段から白人ダンス・バンドものを好んで聴いている人にしかオススメはしない。

Duke Ellington - The Piano Player (Storyville 101 8399)

ellington_storyvilleプライヴェート・テープからの未発表音源集。60~70年代録音。全16曲中、13曲がピアノ・ソロ。
残り3曲はバンドもので、メンバーはルイ・ジョーダンのティンパニー・ファイヴのメンバーでもあったワイルド・ビル・デイヴィスのオルガンにベースとドラムで、ソウル・ジャズ(つうんですか)風のセッション。でも正直言ってどうでもいいといった内容。やはり圧倒的にピアノ・ソロがいい。当たり前か。
デジパック仕様できれいな仕上がりとなっている。


Camille Howard - Vol.1: Rock Me Daddy (Specialty SPCD-7046-2)

camille_rock1ホームページの方でお世話になっている、松川“ピアノロール”裕子さんが「Best5/2004」に挙げて大絶賛していたCD。遅ればせながらホット・ディスクで購入。
カミール・ハワードは亭主のロイ・ミルトン絡みでしか耳にしたことがなかった(と思う)が、今回、彼女名義の録音をまとめて聴いてみて改めて奥方の力量にひれ伏してしまった。さすが松川女史。いいとこ聴いてるなぁ。
それにしてもブギを弾いてもジャジーなナンバーを弾いても、う~む上手い! おまけにヴォーカルも素晴らしいときては、こりゃ亭主は頭が上がらなかったろうな。早速続編もホット・ディスクに注文。

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Oct 12, 2005

山中千尋


chihiro_yamanaka
久しぶりにタワーレコードに行くと、入り口でいきなりハッとするような美女が微笑んでいて、ドキリとした。よく見ると山中千尋のポスターだった。
これは奇遇。今日は彼女の新譜を買いに来たのだ。実は出てからもうひと月ほど経つのだが、すぐ買うつもりだったはずが何となく今日まで延び延びになってしまったというわけ。いや申し訳なかった、って誰に謝ってんだ。

最初に彼女の音楽を聴いたのは車のラジオだった。ファースト・アルバムからの曲だったが、何かこうビビッと来てしまったのである。こういうことは理屈じゃない。とにかく彼女のピアノにすっかりマイってしまい、そのままタワーへ直行したのだった。
ところで、女性シンガーだとまずもって容姿を第一優先にするのが私という人間である。がしかし、彼女はピアニストである。よってこの際見た目はとやかく言うまい。黙って買おうとそんなことを道すがら考えていた。しかしそれが見たら何と。天は二物どころか三物も四物も彼女に与えてしまっていたんである。

その後、彼女のアルバムはすべて買っている。私がストライド・ピアノしか聴かないと思ったら大間違いなのだ。もっとも新録ジャズで欠かさず買ってるといったら彼女くらいのものだけど。それくらいゾッコンなのである。う~ん、おじさんがあと10歳若けりゃなぁ。
さて、メジャー・レーベル移籍後初の今回のニュー・アルバムだが、内容に関してはあちらこちらで書かれているので、もういちいちここには書かない。
立て続けに3回聴いた。よし、明日から向こう2週間、1日1回は必ず聴くぞ。

Chihiro Yamanaka - Outside by the Swng (Verve UCCJ-2040)

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Oct 09, 2005

蒐集ノート/9月

collect_sep

Lincoln Chase - Explosive (Liberty LRP3076)

リンカーン・チェイス。ソウル・シンガー、シャーリー・エリスのご主人なんだそうである。って言っても夫婦揃ってよく知らないんだけど。そんなことより聴いて驚くのはこのジャイヴな音。たとえて言うならスリム・ゲイラードとバブス・ゴンザレスをたして2で割ったという感じ。
1曲目から実にあやしい出足ぶり。まんまゲイラードなんである。バックを付けているのがスペンサー・ヘイゲン・オーケストラとなっているが、わざと大仰にオーケストラとしたのか、実際はコンボ程度のバンド。ちょっと珍しいのはアコーディオンの存在で、しかしこれが実に効いていて、あやしげサウンドの重要なスパイスとなっている。
しかし冷静に考えてみると、こんなの聴いて喜んでるなんて、かなり特殊な趣味かもしれんな。月並みだが、ジャイヴもまだまだ奥が深い。

The Bernard Adison All Stars - High In A Basement (77 Records 77LA12/8)

8月のジャック・マクヴィに引き続き、つっち~御大に「持ってな恥!」と言われた(言ってない?)1枚。
このLPのことは知ってはいたけど、バーナード・アディスンはフレディ・ジェンキンスのバンド、ハーレム・セヴンに残したブルーバード録音の6曲を押さえていればと思っていたので…。まだまだっすね、私も。
それにしてもマクヴィといい、アディスンといい、痛いとこ突いてくるんだよなあ、御大は。

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Oct 08, 2005

ブラック・バタフライ

cootie

初期エリントン・サウンドはバッバー・マイレーのプランジャー・ミュートによるトランペットなしには成立し得なかったわけだが、そのバッバー退団の後を見事に埋めたのがクーティ・ウィリアムスだった。彼はバッバーのグロウル・サウンドを(彼ほど泥臭くはなかったが)再現し、その後エリントン・オーケストラが黄金時代を築くにあたっては重要な一翼を担った、まさに名手と呼ぶに相応しいプレイヤーだった。

さて、クーティといえば「ブラック・バタフライ」なのである。デューク・エリントンが作曲した中では五指に入るフェイヴァリット曲で、美しいことこの上ない1曲。美しさでいえば「チェルシー・ブリッジ」に並ぶが、こちらはさらに胸を突くはかなげなメロディをクーティのトランペットが切々とつづっていくという、哀切極まりない曲想。
しかし、これはエリントン・オーケストラのものを言っているのではない。本曲のオリジナル・バージョンは36年、ローレンス・ブラウンのトロンボーンが全面的にフィーチュアされたものだった。ブラウンのソロはそれなりの雰囲気を醸し出してはいるが、しかし全体として見れば正直佳作の域を出るものではなかった。
それが40年、クーティのコンボ、ラグ・カッターズにより、黒い蝶は美しくもはかなく舞ったのである。ちなみにラグ・カッターズというのは、名義上はクーティのバンドであるが、実質的にはエリントン・オーケストラのピックアップ・コンボで、仕切りは当然エリントンになる。ただ、この曲のピアノはエリントンに変わってビリー・ストレイホーンが担当。彼の耽美なピアノがそこかしこに輝きを与えている。

Taxには画像左以外にクーティのアルバムがもう1枚ある("The Boys From Harlem")。しかし最初は2枚あるとは知らずに「ブラック・バタフライ」はそっちに入っているのだろうと思い込んで、もう1枚の"The Boys..."方を買ってしまったのである。もちろんハズレ。すぐ後にもう1枚出ていることを知ったが、何となく買わずにそのままになってしまっていた。Tax盤は買おうと思えばいつでも買えるし、取りあえずCDでほとんどがカバーできていたので、再チャレンジするほどの購入意欲も沸かなかったのだ。まあ、だから今回買ったのは「ちょっとした気の迷い」なのだけれど、でも改めて聴いてみてやっぱり買って良かったなと思っている。

*画像左より
Cootie And His Rug Cutters 1937/40 (Tax m-8011)
Duke Ellington - Cotton Club Stomp (CBS/Sony 38AP 2993-4)
 "Black Butterfly" 1936 original version 収録

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Oct 04, 2005

ドン・レッドマン

redman

Don Redman (CBS Realm Jazz 52539)

ドン・レッドマンがフレッチャー・ヘンダースン楽団~マッキニーズ・コットンピッカーズ在籍時に示したアレンジャーとしての手腕は、ジミー・ランスフォード楽団のサイ・オリヴァーと並び、当時群を抜いたものとして幾多の賞賛を浴びたが、ソロ独立後はこれらを超える成果を残すことはついぞなかったのである。
しかしそういった先入観を排除して何の気無しに聴いてみると、ソロだって決して悪くないことに気付く。つまりレッドマンはヘンダースン、コットンピッカーズ時代の作品が良すぎただけなのだ。やはり腐っても鯛なのである。たとえがちょっと悪いか。

ただこれらの思いがけない好印象も、LPの編集に依ること大であることは否定できない。レッドマンは多作であるため、CDのフォーマットではどうしても詰め込みすぎになり、その粗製乱造ぶりが目につくことになるのである。
レッドマンのLPといえば、スイスのコレクターズというレーベルからのもの(画像:左)がつとに有名で、同時にそれはオールド・ジャズ・ファン必携の1枚でもあった。
さらに強引を承知でもう1枚推すならば今回のCBS盤になるが、レッドマンのソロ時代を代表する"Chant Of The Weed"が収録されているのはコレクターズ盤であり、従ってレッドマンを知るには(LPならば)まずそちらを備えるべきで、本盤はセカンド・チョイスとなろう。
ともあれ、これらの盤が示すように上質な部分のみを抽出すれば、今まで先入観のみで無関係を装っていた「レッドマンのソロ」に再評価を与えることができるのである。

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