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Oct 19, 2007

ミッドナイト・セレネイダーズ、ベリル・ブッカー

Oct_07

今月聴いたCDの中から。

The Midnight Serenaders - Magnolia
ウクレレ、クラの入ったバンドでオールド・ジャズ/スウィングの佳曲をノスタルジックに聴かせるというわけで、一聴スパンカーズやジャネット・クラインを彷彿させる。特にディー・セトルマイアーという女性ヴォーカルがウクレレ担当ということもあって、余計にジャネットに近い印象を受けるけど、意識してるのかなあ。クリオ・ブラウンでお馴染みの“Here Comes Cookie”、あと“A Porter's Love Song”(こっちはファッツかな)と選曲は買うが、このテのバンドにありがちな押しの一手みたいな歌と演奏に聴き疲れするところも。と思っていたけど、3回4回と聴いていくうちに、なかなかよいではないかと。試聴はこちら

Beryl Booker - 1953-1954 (Classics 1422)
スラム・スチュワートやダイナ・ワシントンとの仕事で知られるベリル・ブッカーのシリーズ第2集。一部ドン・バイアスが加わったトラックもあるが、すべてベリル・ブッカー・トリオによるもの。一応言っておくと、メンバーは全員女性。だからどうだということはないんだけど、ただ一つドラムがちょっと雑なのが気になる。スラムとの共演は第1集で。

V.A. - Before The Blues Vol.1 (Yazoo 2015)
今ごろ何だと思うかもしれないけど、最近よく聴いているので。「ブルース以前」というわけだけど、選曲が実にいいな、これは。B.F.SheltonにWeaver And Beasley、あぁしみるなぁ。

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Oct 15, 2007

Honky Tonk Train Blues (4)

Jazz_piano_classics

結論から言うと、油井氏が「最低です」と言うほどの印象は受けなかった。27年のオリジナル・パラマウント録音はプリミティヴ、は言い過ぎにしても、一切の混じり気を排したもののみが持つ堅牢感というものがある。対してブルーノートの方は、氏の言うとおり、右手に様々な飾りというか、ちょっとしたフレーズが逐一混ざっており、それが耳に付くことは確かだ。どちらがいいか(好きか)と聞かれれば、私もやはりパラマウントをとる。けれど、だからと言ってブルーノートが最低だとは思わなかった。
と、ここまで読まれて「それはおまえに聴く耳がないからだ」と思われた方、あるいは「感想なんて人それぞれ。当たり前の結果だ」と思った方がいるかもしれない。しかし負け惜しみを言うわけではないが、今回の話の要諦は、聴いた結果がどうだったということではない。氏の発した一言に好奇心を刺激され、そしてなけなしの小遣いをはたいてレコードを買わせるまでの行動をとらせたという、そのことにあるのだ。そりゃ、ひざをポンと打って、「センセイのおっしゃるとおり!」となれば、それはそれでハッピーエンドだったかもしれないけど。
結果がどうであれ、この勝負は氏の勝ちと認めざるを得ない。もし、これが聴いてもらうことを意図するディスク・レヴューであれば、やはり第一級の文章であると思うのである。
油井氏の「最低です」は氏の音楽観、音楽を聴く際の姿勢を表した言葉と言える。非常に厳格。だがそれだけに反発も多いだろう。だけれど、音楽という趣味・趣向の世界、どんな書き方をしたって異論反論は必ずあるものなのだ。もちろんオブラートに包んだ言い方はできる。しかしそのような物言いでは、「ふ~ん。あ、そう」でおしまい。いっちょ聴いてみるか、などと心を動かされることはなかっただろう。

つい先日、仙台の佐々木さんから電話がかかってきた。いろいろ話をしているうちに話題がディスク・レヴューのことに。佐々木氏曰く。レヴューはホントにつらいねぇ、一行書くのにどれだけ頭を悩ませることかと。
「へぇ~、佐々木さんでもそうなんだ。でもまるでそんなふうな感じはないけどなあ(笑)」
しかし、そこが佐々木さんのスゴイところなんだろうな。

V.A. - Jazz Piano Classics On Blue Note (King K23P-9281)

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Oct 08, 2007

Honky Tonk Train Blues (3)

Boogie_woogie

閑話休題

前々回の画像の2枚のLP、MCAの『ブギ・ウギ・ピアノ』に関連して思い出したレコードがあったので、ここでちょっと。前回も書いたとおり、『ブギ・ウギ・ピアノ』は日本ビクターが編集した盤であるが、米国デッカにも同じようにブランズウィック音源を使ったブギ・ウギ・ピアノのオムニバスがあった。その盤が日本盤の元になったかどうかは定かでないが、それが画像左の10インチ盤、“Kings and Queens of Boogie Woogie”。ただし、こちらには国内盤にはないアルバート・アモンズ、ドット・ライス、ハニー・ヒル、クリオ・ブラウンが収められている。
あとついでに右はピート・ジョンスンとアルバート・アモンズ、二人による競演もの。最近は日本にも連弾によるブギ・ウギ・ピアノを聴かせるイケメン兄弟がいるらしいが、こちらはその元祖といったところ。もっともこっちはイケメンとはほど遠いわけだが。

V.A. - Kings And Queens Of Boogie Woogie (Decca DL 5249) [10"]
Pete Johnson/Albert Ammons - 8 To The Bar (RCA LPT9) [10"]

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Oct 06, 2007

Honky Tonk Train Blues (2)

Boogie_woogie_rarities

勢いよくトイレを出て早速比較対象となる2曲、つまり27年のオリジナル・パラマウント録音と油井氏に「最低です」との烙印を押された39年ブルーノート録音の入ったレコードの探索にかかった。
一応すでにトイレの中で、確かあれとあれの中にと当たりは付けておいたのだけれど、思ったとおりパラマウント録音の方はマイルストーン盤“Boogie Woogie Rareties”に収録されており、こちらは難なくクリアーできた。

ここでちょっと話はそれるが、前回の画像に挙げた2枚のLPは日本ビクターの編集によるもので、ブギ・ウギ・ピアノの名盤とされるレコードである。2枚並んでいるが、ジャケットが違うだけで内容はまったく同じ。左が最初のリリース盤(厳密に言うと、これの前にキングから出ていたものがあるが)、右がジャケットを替えて出し直したものである。ちなみに解説は最初の盤が油井氏、後からのが日暮泰文氏。で、この中にもルクス・ルイスの「ホンキー・トンク・トレイン・ブルース」が入っているがこれは35年の再録ヴァージョンとなっている。

さて、もう一方のブルーノート録音の方であるが、確かあの中にと思っていたのは、こちらはCDなのだけれど、10年ほど前に東芝が「ブルーノート・クラシックス」と銘打って出したシリーズの1枚だった。
ところがだ。取り出して収録曲を見てみると、あれ、入ってない。うーん、これはマイッタ。となると…。ここからが大変だった。亜熱帯化している自室でパンツ一丁、ピアノ関係のオムニバス盤を片っ端から調べる羽目に。しかし何としたことか、肝心要の「最低です」がないのである。
仕方がない。アマゾンでCDを探すことに。すると何枚かそれらしいCDが出てはきた。がしかし、それがブルーノート録音なのかどうか今ひとつ判然としない。前回引用した油井氏の記述にあるようにミード・ルクス・ルイスは「ホンキー~」を都合5回(実際はもっとあるが)吹き込んでいる。だから収録曲に単に「ホンキー~」とあるだけでは、それがブルーノート録音かどうか分からないのである。こんなときクラシックス盤があれば話は簡単なのだが、残念ながら廃盤となっているのだ。
うーむと唸っていたところ、ひらめいた。馴染みのあのレコード店にうまくすればその曲の入ったレコードがあるかもしれない。早速電話である。
LPだと、ボックス・セットでお馴染みのモザイク・レーベルにルイス、アモンズのブルーノート録音を集めた3枚組のボックスがあるのは知っていた。それなら確実に入っているわけだが、まさか1曲目当てにそこまでは。しかし、もしそれがあると言われたら何と答えようか。えーい、ままよ。
さて、その結果は。残念、なかった。
というわけで、ブルーノート録音は聴けずじまい。極限にまで膨らんでいた闘志は、みるみるしぼんでいくのであった。

その晩、もうすっかりあきらめてビールを飲んでいた。
「さてと、メールでもチェックして寝るか。ん?」 例のレコード店からメールが。
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先ほどお問い合わせの件、以下の盤が在庫ありました。
JAZZ PIANO CLASSICS ON BLUE NOTE (日本キング K23P9281)
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やや!

V.A. - Boogie Woogie Rarities 1927-1932 (Milestone MLP 2009)

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Oct 03, 2007

Honky Tonk Train Blues (1)

Boogie_woogie_pianos

今年の夏は記録的な猛暑だったが、ブギ・ウギ・ピアノもまたあつく燃えた夏だった。ま、燃えていたのは私だけだけど。しかし秋の声が聞こえだした10月、その熱も一体どこへやら。今やすっかり燃え尽き、沈静化してしまったわけである。そこで今回は去り行く夏を惜しみつつ、ブギ・ウギ話を。

さて、話は7月にさかのぼる。油井正一著『ジャズの歴史~半世紀の内幕』の初版本を手に入れたことは以前書いた。この本は「半世紀の内幕」などという仰々しいサブタイトルが付いてはいるが、各章は独立したジャズの小咄になっていて、どこからでも気軽に読める読み物になっている。で、これを今年の夏、音楽など聴く気になれない蒸し暑い日、涼しいトイレに避難してポツポツと拾い読みしていたのである。
そんなある猛暑日、いつものように本をトイレに持参し、適当に開いて読み始めたところがその日は「ブギー・ウギー物語」(今は「ブギ・ウギ」という表記が一般的だが、昭和32年当時はこうだったのである)の章だった。そしてそこでぶつかったのが次の一節。ミード・ルクス・ルイスの「ホンキー・トンク・トレイン・ブルース」についての記述なのだが、誤解があるといけないのでそのまま引用する。

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前に述べました「ホンキイ・トンク・トレイン・ブルース」を、ミード・ルクス・ルイスは、1929年の伝説レコード以来、五回吹込んでおります。これらをききくらべると、あとになるほど、右手の動きに、スイングやリフの要素がはいりこんできて、純粋さを失っています。39年のブルーノート12吋盤は、最低です。
『ジャズの歴史 半世紀の内幕』(油井正一/東京創元社)
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確かにこの本は昔一度読んでいる。が、おそらくそのときは漫然と読んでいたのだろう。今回改めて読んでみて、最後の「最低です」、この一語に実に激しく興味を惹かれたのである。
それにしても、これほど潔い言葉もない。ま、反感は買うだろうが。今はなるべく反感を買わないよう、けなさず、かと言ってほめきることもせず、いいんだか悪いんだか分からないニュートラルな表現を良しとする時代である。だがしかし。この白か黒か、グレーなどは存在しない「最低です」だ。この歯に衣着せぬ言いっぷり。やはり昔の人はエライな。
ともかく、いいにつけ、悪いにつけ、こういうはっきりした物言いを何よりも好むのが私という人間である。そしてその言葉の持つ力が、これは実際確かめなくてはとの突発的行動に駆り立てたのである。

ことほどさように「最低です」は私にとって力強く衝撃的な言葉だった。私も負けずに力強く気張ってトイレを出たのであった。

V.A. - Boogie Woogie Pianos (MCA-3083)
V.A. - Boogie Woogie Pianos (MCA VIM-4638)

※『ジャズの歴史~半世紀の内幕』(東京創元社)は増刷を重ね、その後『生きているジャズ史』と改題してシンコーミュージックから文庫版で出ております。興味のある方はご一読を。

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